リモートワークで生じる仕事のデキる・デキないの格差

リモートワークで悩ましい社員育成

皆さんの職場ではリモートワークの導入は進んでいますか?

職種や社風によって、このあたりのスタンスは異なりますが、新型コロナウイルスのもたらした日本社会での変化の一つが「リモートワークの普及」です。新型コロナウイルスで、リモートワークを全従業員を対象に広げた日本企業も少なくはないでしょう。

かつて(2010年頃)、アメリカに駐在していたとき、Prudential生命に1人で送り込まれていたのですが、今より10年以上前でしたがリモートワークが普及していたことに驚いたのをよく覚えています。国土が広いので、出張費を浮かしたり、地方で採用を行うにはリモートワークは不可欠とのことでした。

加えて、当時、私がびっくりしたのは、リモートワークの普及も然ることながら、先進的なイメージのあったYahooのMarrisa Mayer CEOが、テレワークに否定的なコメントをしたことでした。いわゆる、今の日本の問題を一周先回りしていると、今になっては思われます。

その理由は、皆さんも想像するとおりで、リモートワークで本当に仕事してるのか測定が困難であることや、逆に業務の非効率に陥っている、帰属意識の薄弱化など、正に今多くの日本企業が直面している課題でした。
(以下、2013年のCBCの記事です。"Yahoo bans working from home" (Yahooは在宅勤務を禁止する) というびっくりするタイトルです。)

日本では、遅れること10年以上経った今、正にこのような問題が議論されています。当時より通信環境などのハード面は優れていますが、ソフト面での対応はますます重要になっています。(リモートワークで、サボっちゃう人が問題になるのは日本だけではないようですね。)

ちなみにYahoo含めアメリカ企業が問題視した理由には、日本と異なり終身雇用ではないため、パフォーマンスを測ることに労使双方、相当な関心がある点は留意して読み進める必要があります(日本と事情が異なることは抑えないと単純な欧米との比較になってしまいます。)
終身雇用の日本企業なら、サボってても降給・解雇は極めて稀ですが、年俸制でジョブ型を中心とするアメリカのホワイトワーカーにとっては、フェアーなパフォーマンスやプロセスの測定は死活問題に直結します。

さて、話を日本に戻しますと、私が現在所属する組織も完全リモートワークですが、特に中途採用で入社する方は、コミュニケーションなどで苦労していると感じるケースも多いです。膝をつき合わせていれば、すぐ名前も覚えたりしますし、社内のお作法も気軽に聞いたりできますが、リモート環境ではそうもいかないので、フラストレーションが溜まっている気がします。(自社だけでなく、普段接するクライアント企業の中途入社の方も苦労している姿はよく目にします。ご本人に加え、周りも変な気を遣う姿とかは時折見ていて辛いときもあります。)

この一人ひとりが抱える「もどかしいフラストレーション」について、私は組織の抱える時限装置付きの大きなリスクとして問題視しています。

転職された方なら多かれ少なかれ同感いただけるでしょうが、転職は不安を抱えながら、より良い未来を築くために挑戦をするもので、かなりのエネルギーを要します。その中でも、うまく事を進められる人はともかく、苦労する人も多いです。そうすると、仕事の進め方や会社のお作法がわからず、組織への不満が芽生え、自信喪失につながり、モチベーションダウンを引き起こしかねません。不満分子というのは、独特の空気感を放っており、なかなか厄介な代物ですし、一度、止まったエンジンを再起動するのはとにかく大変です。

社会人経験のある中途採用の方なら、まだ自身の経験を生かして再起動できるかもしれないですが、社会人経験の乏しい新卒や若手の方になると自信喪失・意欲減退はより深刻です。

今後、コロナのワクチンや治療薬も普及し、リモートから出社型(従来型)の育成も増えてくると思います。そうすると、新型コロナウイルスが猛威を振るう中で入社した社員とコロナ後に入社した社員の間で成長・習熟度に差が広がり、よく「就職氷河期世代」と呼ばれた時のようなギャップが、今度は組織内で出てこないか非常に心配です。

会社も対策に向けてさまざまな施策や研修を行っていますが、色々な事例を積み上げ、とにかく打てる手立ては打っていき、一人ぼっちにさせない取り組みが大事なんだろうなと最近では感じています。

こういったリモート中心での育成に向けた制度や仕組みの構築に向けたご相談についても、お気軽にお問い合わせ頂ければ幸いです。