理想の人事評価制度構築と外部ベンダーの活用(成功報酬型のコンサルとのコミットメント)
奥が深く、俯瞰が重要な人事制度を外部有識者を上手に活用しながら設計・定着するコツ
明けましておめでとうございます。2022年の干支は「壬寅(みずのえ・とら)」で、「新たに立ち上がること」や「成長すること」に縁起が良いようです。(壬:妊娠の一部であることから、生まれるという意味を持つ。寅:演出の「演」の字が由来で、成長するという意味を持つ。)
本日は、新年・新年度に向けて心機一転で取り組んでいくテーマとして、本業の人事制度構築について記載します。
パーソル総合研究所による「人事評価制度と目標管理の実態調査」の調査結果が発表されました。
同調査は、①日本企業の人事評価と目標管理制度について、制度実態と運用実態を把握することと②従業員・上司における人事評価と目標管理制度についての意識と行動実態を明らかにすることを目的に約800社・8,000名の従業員に対して実施している調査で、人事評価の効果という内容につき、広範に調べられたサーベイです。
65ページに亘る同調査の中で、具体的には目標管理手法(MBO・OKRなど)や研修・評価(評価者研修・360度評価・180度評価など)の実施状況についても触れられており、人事評価制度の導入や見直しを考える企業にとっては有益な情報が満載です。
【関連リンク】「人事評価制度と目標管理の実態調査」 パーソル総合研究所
人事評価制度の構築は、コロナ禍に伴うリモートワークの広がりやジョブ型への移行(ブーム)などで各企業試行錯誤しており、昨今、人事系のコンサル会社にとっては非常に引き合いが多いテーマとなっております。
私自身は、様々な企業の人事・労務周りのご支援をさせて頂いておりますが、様々な企業と対峙する中で、人事評価制度そのものに最適解はなく、各評価方法の特徴(長所・課題)を理解し、ヒトが使いこなすことこそが最も重要と考えています(大手企業では、規模的にも制度の見直しが目的化するケースもゼロではないですが、当事務所がメインの取引をさせて頂く企業で、「社長の目が従業員に行き届く企業」では本質的な評価制度の導入と定着を強く推奨しながらご支援しています。)
人事評価制度を考える(見直す)に当たっては、目的の整理が重要です。人事評価制度の目的は、主に①報酬・処遇の決定 ②昇格・降格の決定 ③雇用継続の決定があげられます。
例えば、20名の従業員がいれば、もちろん年齢も経歴もバラバラですし、彼らの家庭環境・家族構成も異なります。それらを踏まえて、理想は20名全員が、適正な評価だと満足して働いている職場であることが、100点満点な制度と運用といえます。このように理想を定めた上で、どの層の納得感を最大化するかというアプローチで制度は設計していきます。たとえば、ハイ・パフォーマーの納得感を高めたい会社、絶対数で一人でも多くの従業員の納得感を高めたい会社など、このあたりは各社各様で、社長の考える目指すべき組織風土を落とし込んでいくことになります。ただ、ここで社長一人が考える目指す姿と従業員の考えには通常ギャップがあるので、ここを埋めていく作業(本音を聞き出し、それを社長に伝える伝道者)が外部ベンダーを用いるメリットになります。外部ベンダーの活用については後述しますが、その点を踏まえながら読み進めて頂くとありがたいです。
話を戻しますが、人事評価は基本的には相対的なランク付けが重要になります(最近ではNo-Ratingというものもありますが)。ここでいう人事評価は内向きな社内での相対的なランクになりますので、たとえば他社より報酬が高い・低いというのは人事評価とは切り離して考える必要があります。一般的な人事評価制度で目指す姿は、相対的な順番付けをどれだけ多くの従業員に受け入れられるかということにつきます。
100点の制度は誰も相対的な順番付けに不満なく納得している状態ですが、通常は従業員が増えるほど満足度は下がる関係にあります。例えば、社長と従業員1名の会社では、上下関係が明白なので評価に不満は発生しません(たとえば、その1名の従業員が報酬の低さに不満はあっても、評価をする必要はありません)。ここに従業員がもう一人、また一人と増えると社内での比較が始まります。 このように人数が増えると認識にズレが生じてくるものであり、人事評価制度の見直し支援はそのギャップを縮減し、ギャップが生じにくい制度にすることに集約されます。
前述のNo Ratingにように、従前の人事評価と異なり順番をつけない仕組みもありますが、正直あまり普及しているとは言いづらいのが実情です。このような他社比較ではなく、自己実現を評価に反映させる仕組み、従業員全員が相当にレベル・モチベーション・独立精神が高いことが前提となり、適用できる集団は稀だと思います。最近では従業員間で比較しない組織風土・文化を築こうとしている会社もありますが、果たして人間である以上、そういう組織運営がうまくいくのかはまだまだ未知の部分です。
ここまで人事評価制度の目的について述べてきましたが、次に、人事評価制度を見直していくためのアプローチを記載します。
最初に行うことは「現行規程の調査」になります。規程を改めて読んだ上で、制度概要と問題点の仮説を考え、その後関係者にヒアリングをしていくと現状制度のその組織への適合性が分かってきます。そして仮説の合致度が確からしいと思えてくると、ヒアリングや賃金台帳などを分析し、課題の裏付けを整理していきます。その後、課題の解決に向けた対策を行うが、ここが肝で、評価などの制度の見直しを通じて目指す目的をどれだけ明確にできるかにあります。
仮に不公平な仕組みでも、それによって恩恵を受けている人物もいるわけで、その人物が適正化されることで仮に会社を去るなどして大きな影響があれば本末転倒です。制度だけきれいにしてもいけないゆえんは正にこういうところにあり、このあたりのさじ加減は、経験則や経営トップと話し合う能力がものを言います。
様々な組織と対峙してきた中で、人事評価制度を見直すシグナルとしては次のようなタイミングは参考にしてほしいです。
人事評価制度を導入・見直しすべき兆候
・従業員の採用面接で、社長による最終面接前に複数の面接ステップあり(社長は最終のみなど)
・従業員が増え、各従業員の個別業務について社長の脳内記憶にまではない
・会社規模が増え、社員間で話したことのない人が目立ち始める
・中途採用が多く、年齢が同じでも役職や報酬額が大きく異なる
・社長と従業員が直接仕事の話をする機会が減ってきた(階層が複層化)
・残業時間の格差が従業員ごとに大きくなってきた
上記のような兆候が見られてきたら、人事評価制度の作成や見直しが必要なシグナルと捉えて良いと思います。
会社の文化や方針は社長の一言から発せられ、各人の羅針盤になるのが人事評価制度です。人事評価制度をうまく活用することで、多くの従業員を社長の考える方向に導かせ、効率的な成長を目指していくことが可能になります。
一見簡単に作れそうな人事制度ですが、ここで重要なのは、思いつきで作るだけでなく専門家(外部ベンダー)の知恵を活用しながら作り上げていくことは今後より重要になっていきます。とりわけ、中小企業の場合はトップダウン経営のケースが多いので、独りよがりな制度や労務管理上怪しげな制度になることも珍しくありません。社労士等の専門家を活用しながら、自社にあった制度を導入し、その定着まで一緒に伴走するパートナーを探すことは大切です。どうしても外部ベンダーは、社内の人間ではないので、社長に言われた制度を形にすることに終始しがちです。
外部ベンダーを活用する場合は、最初の意見交換、中間報告の時点で、目的を明確にし、会社として成し遂げたいKPIを掲げることが企業に規模にかかわらず不可欠です。残念ながら、人事制度は、未だに従業員の不満抑制やその場しのぎで導入するケースも少なくはないのが実態なので、今後、中小企業においても外部ベンダーを手軽に活用し自社に合った人事制度を導入できる環境が整えばと切に願う部分であります。
当事務所では、成功報酬型の人事制度コンサルティング(採用を増やしたい、退社率を抑えたい、個人能率を上げたい、クレーム率を下げたい等客観指標化できるものに限る)も実施しているので、自社の課題発掘からその見直しに向けた取組に関心ありましたらお気軽にお問い合わせください。