「45歳定年!?」個人・会社で生き延びていく対策を考える

45歳定年に向き合い、自分自身・家族や自社を守るために必要なこと

先日、経済同友会のセミナーで、サントリーの新浪社長が発した「45歳定年」が物議を醸しました。
「45歳定年」という言葉が、早期退職やリストラを惹起させてしまい、さらにコロナウイルスの下、職への不安を抱える方が多い中、言葉が一人歩きしてしまったという部分があり、本来の主旨から逸脱した部分で議論が白熱している気もします。

もちろん、理屈云々以前に、自分に関係する話となった場合、自分の財布や飯の心配をするのは人の性で、さらに老後資金等の心配が少ない方が発言主となると、反感・反発が生じるのは感情的に至極当然と思います。

ただ、日本における労働法が、OECD諸外国と比較して、パフォーマンスやモチベーションが低い従業員に手厚いのは事実で、ボーダレス化が進む中では安穏としていては危ういことも事実です。たとえば、皆さんもよく耳にするであろう残業などについて規定されている「36協定」については、働き方改革の一環で改正もありましたが、かつてはほぼ青天井で仕事をさせられるなど、いわゆる「会社に従順な従業員」には厳しい条件(会社側に有利)だった部分もある反面、解雇や不利益変更に関しては、「仕事に不真面目であったり、今の仕事に不適正な従業員」に対しては手厚い保護(労働者側が主張すれば相当有利)がなされており、従順ないわゆる一般多数の従業員を置き去りにしていたのも一つの事実です。

特に企業規模が大きくなればなるほど、訴訟に伴う風評リスクを過度に嫌がるので、解雇や懲戒処分時には、証拠集めに相当な労力とコストを掛けており、私自身も人事系の部門に所属していたときには、本末転倒や矛盾を感じたこともしばしばありました。

私としては、世の仕組みに不満を募らせるより、自分や家族の生活を守ることが最重要と考えており、労働者の立場に立つと、現状を理解した上で、45歳定年とは言わないまでも、自律できるようなキャリアプランの形成や、年収等の条件をしっかりとシミュレーションしたライフプランの構築がより重要になってくると考えています。ライフプランも、ご相談を受けた際は「通常シナリオ」を中心に、たとえば年金の受給開始が65歳から70歳になる場合などの「ネガティブ・シナリオ」をご依頼に基づき作成しています。(私自身のライフプランでも、ネガティブ・シナリオを3パターン作成しています。)
不透明な未来を見える化することで、建設的なディスカッションや意思決定の後押しができるので、将来を悶々としている方には、ライフプランを検討軸の中心に置くことをお奨めしています。

一方、企業の立場に立つと、慈善事業ではいので、パフォーマンスの著しくない従業員をどのように指導・処遇することで、会社としてサステナブルに成長できる組織にしていくかが重要です。実際に、コンサルティングのご相談でもパフォーマンスに比してコストが高くなっていく中高年層への処遇に関するご相談は近年非常に増えております。大企業の場合、採れる手法・セオリーは限られていますが、中小企業の場合は柔軟な対応もできます。しかし、その裏にある労使間のイザコザは、大企業のように人事・法務などの専門部署が対応するわけではないので、経営者や真面目に働く従業員の時間ロスにつながることも間々あります。人事制度の改定は、思いつきで実施することもできるのですが、専門家や知見を有した第三者の手を借りながら、石橋を叩いたり、他での失敗事例などを学びながら進めていくことで、高い効果を得られます。人事制度の見直し時には、必ず費用対効果を見積もりながら、実施の是非を決めていくことをお奨めしております。

今後は「45歳定年」が進むかは別として、モチベーションの高い人材はキャリアアップを重ねて、本人の選択権が大きくなり、仕事のモチベーションが小さい人材は安定を求めるなどの意識の二極化が進むと思います。 従業員の立場では、副業・兼業を含めたキャリアパスの複線化、企業の立場ではハイパフォーマーの育成とリテンション、モチベーションの低い層への適切な処遇や予算配分に対して真剣に向き合う必要が出てくると思います。

個人の方で、このままでいいのかと不安を抱えている方で、自分の将来を数字で見える化したい方や経営者の方で人事制度を見直してみないととお悩みの方は、お気軽にお問い合わせ頂ければ幸いです。